リウマチ・アレルギーシンポジウム Part2
10:00〜13:00
タイトル:ステロイド薬を旨く使うこつ

講演者: 田中良哉
卒業大学: 産業医科大学大学院終了(昭和63年)
現職: 産業医科大学医学部第一内科学講座教授
現在の研究テーマ: 自己免疫疾患、内分泌・代謝疾患、
血液疾患における病態解明と治療的応用

リウマチ・膠原病の治療の目標は、免疫異常と炎症の制御である。関節リウマチRAに対する糖質コルチコイド(ステロイド薬)の劇的な抗炎症作用に関するHench等の報告が、ノーベル賞を受賞して以来、約50年間に膠原病に対するステロイド療法は著しく進歩し、予後の改善に貢献したが、その一方、使用方法次第で予後に影響する重大な副作用をもたらすという重要な問題も提起された。

全身性エリテマトーデスSLEやRAなどの膠原病諸疾患に対するステロイド薬の適応と初期治療量は、(1)臨床診断、(2)疾患活動性評価、(3
)障害臓器、(4)病型分類、(5)感染症、心疾患等の合併症などを根拠に決定する。ステロイド薬は少量でも、PGE2産生阻害等を介する強力な抗炎症作用を発揮し、RAの急性炎症期等の多様な炎症疾患に対し対症的に広く使用される。しかし、ステロイド薬の安易な使用は避けるべきで、対症的使用の際には3〜6か月以内の一時的使用に留める。

疾患活動性が高く、急性腎不全、中枢神経障害、間質性肺炎、全身性血管炎等を併発する重症臓器障害を伴うSLEなどの膠原病に対し、リンパ球を含む生体内のステロイド受容体の95%以上を一定時間飽和することによる免疫抑制を目的としたステロイド大量療法(PSL換算約1mg/kg/日)を行う。十分量・期間の初期治療、その後の慎重な減量と維持療法が疾患予後を決定する。

成人呼吸促迫症候群や急性循環不全など生命予後を脅かす際に、ステロイドパルス療法を選択することがある。しかし、日和見感染症や大腿骨頭壊死症など重篤な副作用の併発を考えると乱用は避けるべきで、ステロイド薬大量療法で十分な有効性が得られない場合には、免疫抑制薬の併用も検討する。欧米では、免疫抑制薬をステロイドパルス療法に先立って使用する傾向にある。

ステロイドの重篤な副作用としては、感染症、消化性潰瘍、精神症状、血栓・塞栓、副腎皮質機能不全等があり、大量療法時には十分な臨床的観察を要する。骨粗鬆症は中止にても改善しない必発の副作用であり、ビスホスホネートによる二次予防、並びに一次予防が推奨される。

また、膠原病治療におけるステロイド薬抵抗性も重要な問題である。高い疾患活動性のためステロイド薬に反応しない不応性と長期間のステロイド薬使用による二次無効(耐性)に大別される。ステロイド代謝酵素や受容体の多型性等に加え、多剤耐性遺伝子MDR-1産物であるP糖蛋白質の関与が認められ、シクロスポリンなどの薬剤によるステロイド抵抗性克服効果が期待される。

以上、膠原病においては、ステロイド薬や免疫抑制薬の適正使用により予後の改善が得られた。しかし、安易なステロイド療法の選択や中途半端な治療は回避されるべきで、理論や根拠に基づく適応基準や治療指針の作成の必要性が再認識される。さらに、膠原病を含む免疫難病の根本的治療に関しては、病因・病態形成をもたらすとされる免疫シグナル異常の是正を中心とした基礎的知見に立脚し、臨床に直結する新規治療の展開(トランスレーション)が期待される。

SLEの患者数および予後は果たして変わったか?
小池 隆夫(北海道大学第2内科 教授)
SLEの病気の原因はどこまでわかったか?
山本 一彦(東京大学アレルギーリウマチ内科 教授)
SLEを早くから診断するためのこつ
橋本 博史 (順天堂大学膠原病内科 教授)
ステロイド剤をうまく使うこつ
田中 良哉(産業大第一内科 教授)
免疫抑制剤をうまく使うこつ
三森 経世 (京都大学臨床免疫学 教授)
SLEにおける妊娠と出産
竹内 勤 (埼玉医科大学総合医療センター第二内科 教授)

戻る

©2003(財)日本予防医学協会 All Rights Reserved. 当サイトの内容に関するお問い合せはこちらから