リウマチ・アレルギーシンポジウム Part2
10:00〜13:00
タイトル“SLEの病気の原因はどこまでわかったか”

講演者: 山本一彦
卒業大学: 東京大学医学部医学科卒業(昭和52年3月)
現職: 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻
アレルギーリウマチ学教授
東京大学医学部付属病院アレルギーリウマチ内科併任

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythmatosus; SLE)は細胞の核成分に対する免疫応答と多彩な全身の臨床症状を特徴とする、典型的な全身性の自己免疫疾患である。

膠原病の中の一つの疾患概念として確立しているが、病態の多様性からSLEが単一の疾患なのか疾患群なのは未だに良く分かっていない。SLEは15〜40歳の妊娠可能年齢の女性に高率に発症し、この年代では女性の罹患率が男性の5〜10倍であり、高齢および小児発症のSLEでは女性は約2倍にとどまることから、発症にホルモンの影響が考えられている。

SLEは家族内発症率が高く、家族が他の自己免疫疾患に罹患する率も高い。一卵性双生児の両方がSLEに罹患する率は約25〜30%であり、二卵性双生児では5%程度になる。これらの率は一般人口での罹患率よりはるかに高いので、遺伝的影響が重要であることは明白であるが、同時に遺伝だかですべてが決まっているわけでないことも理解できる。

SLEにおける免疫異常の中心は自己抗体の存在である。特に細胞の核成分と反応するいわゆる抗核抗体は患者の95%以上に認められる。二本鎖DNAに対する抗体とSmと呼ばれるRNA-蛋白複合体に対する抗体がSLEに特徴的である。抗核抗体の産生については、標的となる自己の抗原自体が免疫原となっているantigen drivenの免疫応答であることは分かってきたが、どのようにしてこのような状態が惹起され、それが病態とどのように結びついているかはまだ分かっていない。この点に関しては、自己の抗原に対する免疫寛容(トレランス)の形成と維持および破綻などの研究が、トランスジェニックマウスを用いた実験系で明らかにされつつある。しかし、SLEで最も重要な核内成分に対するトレランスの研究はほとんど行われていない。

一方、トレランスの破綻の原因として、ウイルス抗原との交差反応などやアポトーシスを起こした細胞内分子のエピトープの変化や抗原性の変化などが示唆されている。ウイルスと自己免疫性疾患については、交差反応を引き起こす分子相同性だかでなく、種々の可能性が考えられており、特にレトロウイルスを含めて多くの研究が行われている。

また、最近補体との関係が見直され、高頻度に補体成分に対する自己抗体が存在すること、補体欠損で高率にSLEとなることなどを考え合わせ、アポトーシス細胞のクリアランスに補体が関与し、この機能が低下するとアポトーシスによる細胞内成分が処理されずに増加し、これらが免疫原性を有するとの考えも提唱されている。

SLEにおけるリンパ球異常についても多くの研究がある。増殖異常やシグナル伝達異常などが、原因なのか疾患による二次的なものなのか、遺伝性の疾患感受性因子なのかなどは明らかではないが、SLEの病因、病態を考える上で重要な領域である。また種々の病態を形成する際のサイトカイン、接着分子、リンパ球細胞表面活性化分子などの役割も注目されている。

SLEの患者数および予後は果たして変わったか?
小池 隆夫(北海道大学第2内科 教授)
SLEの病気の原因はどこまでわかったか?
山本 一彦(東京大学アレルギーリウマチ内科 教授)
SLEを早くから診断するためのこつ
橋本 博史 (順天堂大学膠原病内科 教授)
ステロイド剤をうまく使うこつ
田中 良哉(産業大第一内科 教授)
免疫抑制剤をうまく使うこつ
三森 経世 (京都大学臨床免疫学 教授)
SLEにおける妊娠と出産
竹内 勤 (埼玉医科大学総合医療センター第二内科 教授)

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